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 ヒトの遺伝性疾患は原因遺伝子の発現異常によって生じると考えられています。ヒトの遺伝子とマウスの遺伝子は類似(相同)性があります。疾患を研究し治療法を開発するために、マウス胚性幹細胞(ES細胞)を用いてヒト疾患の原因遺伝子に該当するマウス遺伝子を人工的に破壊し、その遺伝子が働かない状態にしたマウス(遺伝子欠損マウスまたはノックアウトマウスとも言う。)を作成します。
 これまでにコケイン症候群の原因遺伝子であるA群コケイン症候群遺伝子(CSA )とB群コケイン症候群遺伝子(CSB )が同定されていて、これらの遺伝子に該当するマウス遺伝子が働かなくなったCsa 遺伝子欠損マウスとCsb 遺伝子欠損マウスが作成されました。しかし、これらのマウスはコケイン症候群のような重い症状(身体が小さく痩せている、よろめき歩けない、長生きできない)は示しませんでした。ヒトで見られる原因遺伝子と症状の関係が、マウスでは見られないこともあり、マウスの遺伝子(ヒトの原因遺伝子に該当)を破壊してもヒトと同様の症状が出ないのです。

 コケイン症候群に類似した症状を示すマウスとして、Xpg ヌルマウス(G群色素性乾皮症遺伝子を欠損)とXpa |Csb マウス(A群色素性乾皮症遺伝子とB群コケイン症候群遺伝子の2つの遺伝子を欠損)を紹介します。
Xpg ヌルマウス
 Xpg ヌルマウスは、体が小さく痩せていて(正常の体重の1/2~1/3までしか増えず成長障害がある。)、よろめき歩けず(小脳失調や歩行異常などの神経症状がある。)、長生きできない(生後約3週間しか生きられない。)という症状を示します。ヒトのXPG 遺伝子の異常によって色素性乾皮症を合併するコケイン症候群(XP-CS)を発症するので、マウスXpg 遺伝子が働かないことでコケイン症候群に類似した症状が見られると考えられます。
Xpa |Csb マウス
 Csb遺伝子だけを破壊したマウスでは症状は出ませんでしたが、Csb 遺伝子とXpa 遺伝子の2つの遺伝子を破壊したXpa |Csb マウスでは、上記Xpg ヌルマウスと同様の重い症状を示します。最近、Xpa |Csb マウスの早期老化の症状を軽減・遅延する薬剤を調べたところ、プロダルサン(Prodarsan)が発見されました。現在、アメリカの小児病院でコケイン症候群の患者さんでのプロダルサンの治療効果を検討中です。このことからも、モデルマウスは、コケイン症候群の治療薬の開発・発見に重要であることがわかります。
 今後、これらモデルマウスを用いて、マウスの病態からコケイン症候群の病態を明らかにし、臨床症状の軽減や治療薬の発見に役立つ研究を進めていきます。

参考文献:中根裕信 ヌクレオチド除去修復欠損マウス-転写異常とその病態-、医学のあゆみ、vol.228,No.2,p157-158,2009

鳥取大学医学部機能形態統御学講座ゲノム形態学分野 中根裕信

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