分子遺伝学的診断2

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 はじめに: 臨床的な所見からコケイン症候群が疑われる患者様について、アイソトープを使用せずに簡易に細胞診断する方法を紹介します。

必要な器具: クリーンベンチ、インキュベーター、殺菌灯、蛍光顕微鏡
必要な試薬:  Click-iT labeling kit (invitorgen), 5-ethynyl-2'-deoxyuridine (EdU) (Invitorgen), 5-ethynyl uridine (EU) (Invitrogen)
方法: 患者様の皮膚片から樹立した繊維芽細胞が、紫外線の照射により感受性を示し、不定期DNA合成(UDS)が陽性であり、かつRNA合成回復(RRS)が陰性である場合に、コケイン症候群由来であると診断する(図1のフローチャート参照)。


  1. 定法にしたがって、患者様の皮膚片から初代培養細胞を樹立する。

  2. 紫外線感受性試験: 培養皿に細胞を播種する。翌日に細胞に対して、殺菌灯などを用いて紫外線を照射する(照射量: 0, 2, 5, 8 J/m2)。約1週間培養をした後、コロニーを固定、染色して生存率を測定することにより、UV感受性があるか判断する。

  3. UDS試験: 培養皿にカバーガラスを入れて、細胞を播種し、培養皿に対して約100%の密度になるまで培養する。紫外線(15 J/m2) を照射する。EdUを終濃度10μMになるように加え、2時間培養する。3.7%ホルマリン液で15分間固定した後に、0.5%トライトンX-100溶液で15分間処理する。カバーガラスをとりだし、Click-iT labeling kitのプロトコールにしたがって、取り込まれたEdUを蛍光標識する。蛍光顕微鏡で画像をtif形式で保存する。Image Jソフトウェアで蛍光強度を測定する。

  4. RRS試験: 培養皿にカバーガラスを入れて、40%の密度になるように細胞を播種し培養する。紫外線(15 J/m2) を照射し、さらに23時間培養する。EUを終濃度100μMになるように加え、2時間培養する。3.7%ホルマリン液で15分間固定した後に、0.5%トライトンX-100溶液で15分間処理する。カバーガラスをとりだし、Click-iT labeling kitのプロトコールにしたがって、取り込まれたEUを蛍光標識する。蛍光顕微鏡で画像をtif形式で保存する。Image Jソフトウェアで蛍光強度を測定する。

細胞診断例の紹介



図2に、UDSを撮影した図を示す。UDSのシグナルは、核全体が蛍光で標識される。Mori(正常細胞)、Kpsx6 (コケイン症候群B群)では、UDS陽性である。これに対してKps4 (色素性乾皮症A群)はUDS陰性である。

図3に、RRSを撮影した図を示す。RRSのシグナルは、核全体、特に核小体が蛍光で強く標識される。Mori(正常細胞)、では、RRS陽性である。これに対してKps4 (色素性乾皮症A群)およびKpsx6 (コケイン症候群B群)はRRSレベルの顕著な低下がみられた。
CCDカメラを用いて、この画像を撮影し、Image Jソフトウエアで蛍光強度を定量した (図4)。
以上の結果から、Kps10細胞はUV感受性を示し(データ未表示)、UDSが陽性であり(図2)、RRSが陰性(図3、4)であることから、コケイン症候群由来であると考えられる。



























熊本大学 発生医学研究所 発生制御部門 立石 智

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