分子遺伝学的診断1

コケイン症候群各論 > 分子遺伝学的診断1

 臨床的にCSが疑われた場合には、以下の方法を駆使してCSの確定診断を試みる。試料としては通常は患者皮膚由来初代培養線維芽細胞が用いられる。

1.皮膚の採取から初代培養線維芽細胞樹立まで
 日光非露光部(上腕内側、腹部、臀部など)の無疹部から局所麻酔下に皮膚生検を行い、皮膚組織を採取する。皮膚採取に際しては、深さは真皮下層まで、大きさは径4ミリ以上であれば十分である。その後、抗生物質を用いて皮膚組織を数回洗浄した後、定法に従い線維芽細胞の初代培養を行う。皮膚片採取後1週間程度までは線維芽細胞の初代培養が可能であるが、皮膚採取後出来るだけ早い時期に初代培養を開始する方が増殖能の高い線維芽細胞が早く得られるため、再現性の高い検査結果が早く得られる。患者が年長の場合、線維芽細胞の初期増殖が遅い傾向にあるため、皮膚採取後は迅速な対応が必要である。他施設に検査を依頼する場合は、皮膚生検後すぐに滅菌培養液あるいは滅菌生理食塩水を充満した滅菌容器に浸して、できるだけ早く宅配便にて、CS検査施行施設に郵送する。検体皮膚の保管・郵送は必ず常温で行い、気温が下がる冬場は使い捨てカイロを郵送するボックス内に入れておくとよい。通常、患者由来線維芽細胞は初代培養開始後約3〜4週間で十分に増殖し、以下の各種DNA修復試験を行うことが可能となる。

2.CS確定診断のための各種DNA修復試験
(1)紫外線照射後の不定期DNA合成能(unscheduled DNA synthesis;UDS)測定
 患者細胞に紫外線照射した後のHチミジンの核内への取り込みをオートラディオグラフィにて検出する。ヌクレオチド除去修復の中のゲノム全体修復系が維持されているCS細胞ではUDSは正常である

(2)紫外線感受性試験
種々の線量で紫外線(殺菌灯)照射した患者細胞のコロニー形成能を評価する。
CS細胞ではきわめて高感受性である。

(3)紫外線照射後のRNA合成能
 患者細胞に紫外線(殺菌灯)照射した後のHウリジンの核内への取り込みをオートラディオグラフィにて検出する。CS細胞ではヌクレオチド除去修復の中の転写共役修復系に異常があるため低下する。

(4)相補性群試験
従来法である細胞融合法による相補性試験は、検査の迅速性、簡便性、感度という面では必ずしも優れた方法ではなかった。それらの欠点を補った新しいCS診断確定のための検査法として、プラスミド宿主細胞回復能を指標にしたCS相補性試験が一般的に行われるようになっている。レポーター遺伝子としてあらかじめ紫外線(殺菌灯)照射したルシフェラーゼ発現ベクターを使用し、CSが疑われる患者細胞内で人工的にDNA修復をさせる。その能力がCS各群(A,B群)、XP各群(B、D、G群)の発現遺伝子導入により上昇(相補)するかどうかを判定すればCS相補性群あるいはXP/CSコンプレックスの確定が可能となる。

(5)遺伝子検査
 CSでは遺伝型・表現型の関連性が示されていないため遺伝子検査は必ずしもルーチンに全例施行されるわけではない。これまでの報告例ではCS遺伝子の変異にホットスポットがないため、CSA あるいはCSB の全エクソンの直接シークエンスを実施する。

3.最終診断
 種々の臨床所見と前述の解析の結果をふまえてCSの最終確定診断を行う。その際、CSの類縁疾患である色素性乾皮症、既知の神経変性疾患との鑑別が重要である。


大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学 森脇真一

▲このページのトップへ